財産分与の対象とならない財産
財産分与の対象になるのは「婚姻中に夫婦が協力して取得した財産」です。これを共有財産と表現します。一方、一般的に次の財産は(共有財産ではなく)特有財産となり、財産分与の対象となりません。
- 結婚前から各自が所有していた財産
⇒ 婚姻中に取得した財産ではないため - 結婚中であっても、一方が相続した財産、贈与をうけた財産
⇒ 夫婦の協力のもとに築いた財産ではないため
これら「財産分与対象外」の財産を、離婚の際に他方へ譲渡した場合は、基本的には「贈与」となり、贈与税が発生する可能性がありますので十分注意が必要です。
財産分与と税金
ア)贈与税
財産分与(または離婚に伴う慰謝料)や養育費として一方が財産を取得した場合、原則として贈与税は課税されません。これは、財産分与が夫婦共有財産の清算という意味があって、形式的には夫婦の一方から他方に財産が移転することにはなりますが、実質的には共同所有していた財産を分割するに過ぎないからです。
もっとも、夫婦間の清算とはかけ離れた「過剰な財産分与」をすると、贈与税が課税されます。
イ)その他の税
贈与税は有名ですが、財産分与では次の税金も考えなければなりません。
A:登録免許税 | <原則もらう人> 名義変更登記の時に法務局へ納付 |
B:固定資産税 | <もらう人> 課税されます |
C:不動産取得税 | <もらう人> 場合によっては課税されます |
D:譲渡所得税 | <渡す人> 課税されます |
説明A:登録免許税
不動産を財産分与する場合には、法務局に支払う税金(登録免許税)が必ず必要になります。
登録免許税は、固定資産評価証明書に記載のある不動産評価額の2%となります。
説明B:固定資産税
所有する不動産(資産)に対して課税される税金です。
毎年1月1日時点で、不動産の所有者に対して課税されます。課税額は固定資産税評価額×税率となり、税率は(各市区町村が条例で定めますが)約1.4%が多いようです。
説明C:不動産取得税
不動産取得税
不動産を取得した側が負担する可能性のある税金です(地方税)。
説明D:譲渡所得税
譲渡所得とは、おおざっぱにいうと、例えば3000万円でマンションを買ったとします。これを譲渡するときの価値(時価)が4000万円になっていたとします。この「差額1000万円」(譲渡のよって得た利益=譲渡益)」がある場合にかかる税金です。
なお、財産分与の対象が「現金」の場合は、譲渡所得税はかかりません。あくまで財産分与の対象が不動産、株式などの場合に課税されます。
不動産取得税、譲渡所得税
ア)不動産取得税 <受ける人>
財産分与として不動産を取得することになった場合、結論としては原則、不動産取得税はかかりません。なぜなら、共有財産たる不動産を財産分与として清算した結果の取得であり、新たに財産を取得したわけではないという趣旨からです。
※一方、財産分与の内容が清算的ではなく「慰謝料的(慰謝料として不動産を受け取った)」「扶養的(妻の生活保護のために夫が不動産を与えた)」な場合は、不動産取得税がかかります。
※不動産を含む財産分与が、夫婦間の清算とはかけ離れた「過剰な財産分与」であった場合、やはり贈与税が課税される可能性がありますので留意が必要です。
イ)譲渡所得税 <渡す人>
譲渡所得の譲渡には、財産分与による不動産の譲渡も含まれます。よって財産分与した時の不動産の時価が(不動産取得時の時価より)値上がっていた場合(=譲渡益が発生する場合)、渡した側に譲渡所得税が課税されます。
ところが、居住用不動産の譲渡の場合、譲渡益が発生するときであっても、譲渡所得税を抑えるいくつかの優遇措置があります。別荘やセカンドハウスには適用されない、居住用不動産(マイホーム)のみの優遇措置です。
なお、この優遇措置は財産分与の時期が「離婚前」か「離婚後」かで適用が変化するので注意が必要です。
① 3000万円特別控除
離婚後に、マイホームを分与すると、最高で3000万円まで譲渡所得税がかかりません。なぜ「離婚後」なのかというと、この特別控除は、夫婦間や親子間では適用されないためです。
離婚手続き終了後に財産分与したのであれば、分与時点では夫婦ではないので適用が認められています。逆に、正式な離婚手続き前に財産分与をした場合は、夫婦のためこの特別控除は適用外となります。
この3000万円特別控除の詳細な要件は、次の国税庁HPを確認ください。
② 2110万円配偶者控除
離婚前に、マイホームを贈与することで、最高2110万円まで贈与税がかかりません。なぜ「離婚前」なのかというと、夫婦間の贈与にのみ認められた配偶者控除の特例だからです。
これにもいくつかの要件がありますが、最大の特徴は「結婚して20年以上の夫婦であること」です。
この2110万円配偶者控除の詳細な要件は、次の国税庁HPを確認ください。